くまきち考察ブログ

地球に住むしろくま、くまきちときんたろの考察をするブログ

【創作小説】きんたろうの盆踊り

最近投稿されたきんたろうの盆踊りを見て、ちょっとした物語が浮かんでしまったのでブログで発散します。こんな未来、どうでしょうか?

 

 

 

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「キンチョーキンニクキンタローデス  アー イーネイーネイーネ」

 

今年もあの歌が聞こえてくる。あの歌はスピーカーに乗って、盆踊り会場となっている公園全体に響き渡っている。そして私は今、太鼓を囲むようにして回る数十人の大人たち紛れて、あの歌に合わせて同じ踊りを繰り返し踊っている。

 

いつからだろうか。私の住む町内ではもともとは「御所町音頭」という独自の音頭が使われていた。あの歌が盆踊り会場で繰り返し流されるようになったのはここ最近のことである。10年前に「日本くまきち党」が政権を取ってから、くまきちとその仲間たちによる生活の「統一」はここ5年で急速に進んできた。

 

新聞やラジオで流れるのはくまきちとその仲間たちに関連するニュースや番組ばかり。テレビをつければ「日本くまきち放送会」の番組以外は姿を消してしまった。学校に通う息子と娘はくまきちのイラストが大量に差し込まれた教科書を使って先生の授業を聞いているという。また大人でも、もしくまきちとその仲間たちに批判的な言動を見せようものなら、たちどころに連行され、二度と姿を見ることはない。

 

三年前の夏の日、誰もがくまきちとその仲間たちを表立って批判できないような社会情勢のなか、当然のようにそれはやってきた。いつもと変わらぬ会場、いつもと変わらぬメンバー、ただひとつ変わっていたのは、スピーカーに乗って流れる曲が「御所町音頭」ではなく「きんたろ音頭」になっていたことだった。しかし参加者の中で、それに動揺するそぶりを見せる者はいなかった。みんなさもそれが昔から続いてきた風習であるかのように、当たり前のようにきんたろ音頭を踊っていた。

 

「キンチョーキンニクキンタローデス  アー イーネイーネイーネ」

 

いつまで続くのだろうか。こうして今年も長い夏がやってきたのだった。しばらく自我を殺して脊髄反射的に踊りを続けていると、突然曲調が変わった。

 

「ドドンドドン パン ドドンドドン パン」

 

(まさかこれは、われらが地元の曲、御所町音頭ではないのだろうか…)

私の中の秘めた闘争心がワッと沸き立つような気がした。

 

「キンタローはキンチョ キンタローのヨサダネ 時間があれば筋トレさ ムキムキでくるしゅーない」

 

期待したのも束の間、それはきんたろう音頭の二番であった。動揺する素振りを一切見せず、変わらず踊り続ける周りの人々を見て、私の闘争心は再び長い眠りについてしまったのだった。

 

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今年も私は、きんたろう音頭を踊る。意味があるともないとも言えないそれは、着実に世界を支配していった。